2024年8月、会社を辞めてフリーランスとなった私は、デジタルノマドとしての第一歩を踏み出すため東欧のジョージアを訪れた。主な目的は、旅しながらリモートワークで働くデジタルノマドを目指す人向けのワークショップ「ノマドニア」に参加するためだ。
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1年間ビザなしで滞在できることにくわえ、スモールビジネスの場合税率が1%になることや、生活費が抑えやすいことから、多くの日本人が移住を考えるジョージア。なかには、FIRE(経済的な自立による早期退職)をしてジョージアで暮らす人もいるという。
私は1か月半滞在したが、参加したワークショップはもちろん、そこでの生活や住んでいる人たちの考え方が本当におもしろく、「世界観が変わった」と思えるほどだった。
今回の滞在では、ジョージアでのワークショップやリモートワーク、アルメニアやアゼルバイジャンなどのコーカサス諸国を旅した様子を紹介したい。
ジョージアはロシアの南、トルコの西に位置する国。ジョージアを渡航先として選んだのは、ノマドニアの開催地の中で唯一行ったことがない国であり、世界からデジタルノマドが集まる国だと聞いたからだ。
ジョージアへの行き方を調べてみると無数に選択肢があった。意外にも片道数万円のものもあり、どれにしようか迷ってしまうほどだった。
私が選んだのは、1回の乗り継ぎでジョージアに行けるカタール航空。セールとはいえ直前で購入したため片道で11万円ほどだったが、ドーハで乗り継ぎ、約23時間後にジョージアの首都トビリシに到着できた。
私が参加したワークショップ「ノマドニア」は、8月5日から約1か月開催された。同じタイミングで参加していたのは20代から40代の計5人。エンジニアなど複数の職種を経験したことがある人から、大学を卒業して間もない人などさまざまだった。デザインに興味がある人から業務効率化を学びたい人まで、それぞれの関心も全く違ったのが印象的だった。
ノマドニアでは、Webサイトのデザインをする「Webデザイン」やそのデザインを実装する「Webサイト制作」、企業のSNSアカウントを育てる「SNS運用」などの10職種を体験した。基本的に各職種のワークショップは平日午前中の3時間のみで、午後は自由時間。そのため、午後はワークショップの課題を仕上げたり、仕事探しの時間にあてたりした。
ジョージアにはコワーキングスペースはもちろん、電源やWi-Fiが完備のカフェも多く、そこで仕事をしている人もたくさんいた。ちょっとした仕事に理解があるカフェが多かったため、気分転換に外で作業できたのもうれしかった。
私がノマドニアで特におもしろいと感じたのは、仕事としてやってみたい「職種」を探すのではなく、夢中になれる「動詞」を探すというコンセプトだ。1職種あたりのワークショップの時間は計6時間のため新たなスキルを身につけることは難しい。ただ、まず体験してみることで、自分が何が好きで何に没頭できるかを見つけることに重きを置いている。
デジタルノマドになることも強制しておらず、「ノマド生活は合わない」と感じた場合はオフィス出社の企業に勤めるなど、ノマドとは別の道を選択する人もいるようだ。「好き」だと思えるものが見つかったら、自分でスクールに参加したり、まず仕事を受注したりと、さまざまな方法で自分のスキルを磨いていく。
私はもともと広報やWebライターをしており、その仕事自体は好きだったが、今回のワークショップを通して新たに興味を持ったのは、デザインとWebサイト制作だ。特に「作る」ことが好きで、ノマドニアでのポートフォリオサイト[g]の作成も楽しめたが、何かの「仕組みを作る」ことよりも、直接「誰かの目に触れるものを作る」ことが好きなのだと気づくことができた。
自分が何が好きかに気づけたことで、今後はWebライターとしての仕事を増やしながら、記事作成の延長で資料作成などのデザインにも携わり、仕事の幅を広げていこうと道筋を立てることができた。
ノマドニア終了後も2週間はジョージアに滞在した。日本との5時間の時差を利用し、ジョージアの午前中は日本と連携して面談などをしつつ、午後の時間を使ってジョージア国内を旅行したり、一部の平日を休んでアルメニアやアゼルバイジャンなどのコーカサス諸国に足をのばしたりした。
ジョージア国内で印象に残っているのは、トビリシから車で片道30分ほどで行くことができ、ジブリ映画のような街並みがかわいらしいムツヘタという都市だ。街中にある教会の圧倒的な存在感が印象的で、山の上の別の教会から見渡すムツヘタの街は絵画のようにきれいだった。
ジョージアはワイン発祥の地とも言われており、自家製のワインを作る家もあるそうだ。そうした習慣があるためか、軒先にブドウが実っている光景もきれいだった。ブドウはワインづくりに使われることはもちろん、絞った果汁を煮詰めてナッツに付けたジョージアの郷土菓子「チュルチュヘラ」にも使われる。ジョージアの市場に行くと必ずと言っていいほどたくさんのチュルチュヘラを見かけ、そのカラフルさに心が踊った。
ジョージアはアルメニアやアゼルバイジャンなどのコーカサス諸国へのアクセスも良かった。
アルメニアの首都エレバンへは、トビリシからバスで約6時間で行くことができた。ジョージアよりも物価が安い印象で、首都のエレバンにある「共和国広場」の統一感のある夜景のきれいさには感動した。エレバン市内にはレトロでかわいらしい見た目の車が多く走っており、おいしい料理もたくさんあったため、街中を散策しているだけで楽しかった。
アゼルバイジャンはコーカサス諸国で唯一全く印象が違った国だった。ジョージアやアルメニアとは異なり、大多数がイスラム教徒であるためか、人の雰囲気などがヨーロッパというよりは中東に近い印象だった。物価は日本よりやや安い印象だが、ジョージアやアルメニアよりは明らかに高いと感じた。ただ、カスピ海に面しているため魚がおいしかったのはうれしかった。チョウザメが有名で、試食させてもらったキャビアは油と塩分のバランスが絶妙で、生まれて初めてキャビアがおいしいと感じた。
もともと私は9月半ばに夫とウズベキスタンの首都タシケントで待ち合わせる予定だったため、ノマドニアが終わってからは、ゆっくりアルメニアやアゼルバイジャンなどを観光しようと思っていた。
ただ、たった2週間ではあるものの、できる限りジョージアにいたいと思ったのは、日本では出会えないような人たちとの交流があったからだ。
ジョージアはロシアや中東に近いこともあり、東欧や中東諸国の人たちと交流する機会も多かった。特に記憶に残っているのは、ルームシェアをしていたイスラエル人だ。日本のアニメが好きで、私が日本人だと知るや否やうれしそうにその魅力を語ってくれ、「いつか日本に行きたい」と目を輝かせていた。
ただ、彼と交流した際の「君は戦争で死ぬ心配をしなくて良いからね」という言葉は強く印象に残った。
笑顔で冗談めいた話し方だったため深い意味はないと感じたが、彼は情勢の変化を受けてイスラエルを離れ、コーカサス諸国を回っているそうだ。「イスラエルには戻るつもりはない」といい、今後もさまざまな国を旅しながら、モロッコなどの国々にいる仲間たちとリモートでミーティングを行い、自分で開発したサービスをオンラインで売って生計を立てていくという。
ジョージアでは、スモールビジネスの場合税率が1%となることや、日本人であればノービザで1年間滞在できることから、ノマドニア参加後にそのままジョージアに残り、デジタルノマドとしての生活の基盤を整える人も一定数いる。また、暮らし方によるものの日本よりも生活コストを抑えやすいため、FIRE(経済的な自立による早期退職)をしてジョージアで暮す人もいるようだ。
私は会社を辞めてフリーランスになったものの心の中は不安でいっぱいで、きちんと仕事を見つけて生計を立てて行くことができるのかと悩むことも多かった。ただ、ジョージアで出会った人たちは、自分がどう生きたいか、そのためにどう働きたいかを真剣に考え、行動している人たちが多いと感じた。そんな人たちからたくさんの意見や刺激をもらうことで、今後の仕事につなげられるような行動をすることができた。
滞在しやすさにくわえ、人との出会いが印象的だったジョージア。フリーランスとしてきちんと生計を立て、また近いうちに戻りたいと心から思える滞在だった。
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